研究概要 |
経済の成長は,資本(実物及び人的)の蓄積によって国内所得が増加する現象を指す。この過程では,資本は家計によって資産として保有される。資産は,購買力の将来への持ち越しを意図した価値保蔵の手段である。経済動学モデルでは,一次的として家訓は将来の資産価格を予見できるもの(完全予見の仮定)と想定する。その場合,均衡資産価格と(現在価値で表示される)資産収益の総和とが均等する。すなわち,経済のファンダメンタルズが市場均衡を決定する経済成長モデルが存在することになる。 しかし,完全予見の仮定を緩め,家計は将来の資産価格を不確実にしか予見できないとしよう。すると,家計は確率分布に基づいて期待価格を形成する。即ち,ノイマン=モルゲンシュテルン型効用関数を仮定するのである。その結果,若年世代全体の所得が上に有界であるとき,競争的な資産市場が修正された横断性条件を満たし,期待均衡価格と(現在価値で表示される)期待収益の総和とが均等する。つまり,リスクがあったとしても,幾つかの仮定の下ではファンダメンタルズが市場均衡を決定する経済成長モデルが存在することになる。 他方,リスクを含む上のモデルにおいても,資産市場が収益の期待現在価値を上回る均衡株式価格を形成する可能性は残る。つまり,資産にバフルが生じる場合である。このケースでは,ファンダメンタルズと市場価格の乖離が,世代間の所得移転を過剰に進め,経済厚生が損なわれる。
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