研究概要 |
まず新規大学卒業者の就職率低下の実態を把握し,新規大学卒業者が希望する雇用と企業が提供する雇用のミスマッチがその原因であることを明らかにした.このことから,大学卒業者の就職率低下が労働移動にかんする問題であることがわかった.なぜならこのようなミスマッチはおもに,労働移動の円滑化によって緩和されるからである.そこで本研究は,国内労働移動および国際労働移動についてのモデル分析をおこない,新規大学卒業者の就職率を含む経済全体の雇用状況を改善するための方法を導き出そうとした.そのためにまず「労働市場と組合モデル」でマクロ経済の総供給サイドをモデル化するために必要な組合モデルの特徴を調べた.つぎに「2国マクロ経済モデルにおける国際労働移動」で国際労働移動を分析するさい基本とする2国マクロ経済モデルを定式化し,「輸入関税と国際労働移動」,「国際労働移動と所得格差」,「総需要と国際労働移動」,「国際労働移動の方向』および「国際労働移動にかんする政策目的の達成可能性」で国際労働移動が雇用をはじめ経済におよぼすさまざまな影響を調べた.また「外国人労働者の流入が自国人労働者におよぼす影響」,「熟練労働,不熟練労働および国際労働移動」,「われわれは熟練外国人労働者だけを受け入れられるか」および「不熟練外国人労働者の流入抑制」で外国人労働者の流入が自国人労働者におよぼす影響を調べた.そして「二重労働市場と国際労働移動」,「国内労働移動と国際労働移動」および「内生的な労働移動」で国内労働移動と国際労働移動が同時にしょうじる経済を分析した.以上のモデル分析から,職業教育の充実,企業と労働者のあいだでの雇用情報の交換活発化,新規大学卒業者等を含む不熟練労働者への多様な雇用形態の提供,on-the-job trainingによる熟練労働市場への移動促進などにより新規大学卒業者の就職率を含む経済全体の雇用状況が改善されるという結果を導き出した.
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