研究概要 |
当研究課題における3年間の研究成果は,つぎのような3つの柱に分けられる。 (1)日本の環境分析用産業連関表を用いた応用研究 (2)中国の環境問題に関する研究 (3)東アジア9ヶ国の経済と環境問題に関する研究 (1)について,まず研究期間前半において「1995年環境分析用産業連関表」の推計作業を行った。その後1995表を過去の表(85年,90年表)と比較検討するとともに,そこでの観測事実をまとめた。その結果,日本全体からのCO_2排出は85年の10億トンから90年には12億トン,95年には13億トンまで伸び続けていることがわかった。特に家計の消費活動,運輸活動によるCO_2排出の伸びは大きい。さらにそれを用いた具体的分析として環境家計簿分析を行った。環境家計簿分析によって家計属性別のCO_2排出構造を詳しく分析したが,さらに家計消費の中でも特にCO_2排出に関わりの深い家庭用エネルギー需要に関して掘り下げた分析を行った。 (2)については,中国では石炭を主なエネルギー源としていることからのSO_2問題が特に重要と考えられた。そこでSO_2と石炭消費の現状把握を行うために,中国統計年鑑、能源年鑑などの公表データ,石炭技術者へのヒアリング等を通じて中国の地域別産業別エネルギー消費量及びCO_2・SO_2排出量のデータベースを作成し,その結果分析を行った。次に,中国で実現可能な省エネ技術、あるいは脱硫技術を工学者にヒアリングし、その普及が上記結果に及ぼす影響を試算した。 (3)については研究期間のほぼ全体にわたって,東アジア地域(具体的には日本,韓国,中国、マレーシア,シンガポール,タイ,インドネシア、フィリピン,台湾の9ヶ国)に関する「環境・エネルギー問題分析用産業連関表:略称EDEN」の作成作業に従事した。これは各国の産業連関表を76部門の共通分類に集計した上で,相手国統計機関の協力のもと,各国各産業のエネルギー消費状況を22種類の統一エネルギー分類ごとにまとめ,さらにそこから、各国のCO_2・SO_2排出量を推計した表である。暫定的な第1次推計結果を得たのちも,国連その他の公表データとの整合性チェック,工学情報に基づいた推計ミスのチェックなどを重ねることにより,精度の向上をはかった。一応の結果を得た後,各国の経済活動とCO_2・SO_2排出との関係を詳しく分析するとともに,EDENをアジア経済研究所が公表しているアジア地域国際産業連関表や国土交通省の海上輸送データなどとリンクさせて,アジア地域の経済と環境の相互依存関係の実態について分析した。その結果,たとえば日本人の最終消費活動が東アジアの国々の生産活動および国間の貿易活動を通じて引き起こすCO_2排出の実態がわかった。
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