研究概要 |
本研究の基本的目的は、 (1)科学技術データベース(論文データベースのINSPEC,COMPENDEX, JOIS、および特許データベースのPATOLIS,WPI等)を用いて技術連関表を作成し、世界の科学技術の進歩の基本的トレンドを明らかにすること(とりわけ、情報通信分野のそれを明らかにすること)、 (2)アメリカの技術連関表と日本のそれを比較対照することによって日本の科学技術の進歩が世界の潮流の中でどのように位置づけられているかを解明すること、 (3)日本の研究開発基盤の特質や問題点を析出すること、 にあった。このうち、(1)(2)については世界の情報通信ネットワークがソフトウェアをベースとしたコンピュータネットワーク(インターネットに代表される)に向かっているのに、日本がハードウェアにバイアスのかかったテレコムネットワーク(電話網の延長上にある)への指向が、1990年代を通して強かったことを解明することが出来たこと、等、当初の目的をかなりの程度において達成できた。とりわけ、INSPEC,COMPENDEXから作成された技術連関表や、WPIの検索から得られた主要国の特許取得件数のデータがこの分析に極めて有意義であることが分かった。今後の課題として、さらに情報通信分野に限らず、21世紀に間違いなく重要になる生物生命科学・工学分野にまで拡大して分析することの必要性を確認することが出来た。(3)については、上述の日本の特徴が、マクロ的(産業組織や官民の連携システム)にもミクロ(企業組織や雇用慣行)的にもにもさまざまなレベルでの制度的要因と不可分であること等を解明できたが、さらに今後の一層の分析が必要であることが確認された。
|