研究概要 |
我が国の廃棄物の発生量は、1990年度よりほぼ45,000万トン前後で推移している。産業廃棄物は、それら廃棄物の大半を占めている。1995年度の廃棄物のうち、家庭や事業所から排出される一般廃棄物が5,000万トンに対し、産業廃棄物は39,400万トン、全体の約89%を占めている。それに対して、厚生省の予測によると2008年には最終処分場の残余容量がなくなるとされており、産業廃棄物の削減は緊急性を帯びた最優先課題である。 また、産業廃棄物処分場による環境汚染問題、産業廃棄物の不法投棄などの事例において、産業廃棄物による環境汚染の原状回復に要する費用の多くは、最終的な負担は、結果的に公的なものとなっている。産業廃棄物の責任の所在は排出事業者にあるとされながらも、廃棄物のもたらす不経済に対して、排出事業者は、その責任に見合う適正な負担をしていない。 そこで、本論文では、資源循環型社会確立へと誘導するという政策のあり方を模索する中で、産業廃棄物への課税を検討した。すなわち、埋め立て等の最終処分施設へ搬入される産業廃棄物に対して課税を行い、廃棄物が再資源化施設へと搬入・リサイクルされるインセンティブとした場合の産業廃棄物への削減効果を検討した。 まず、産業廃棄物の課税モデルを構築し、その後、実際の統計データをパラメーターとして与え、シミュレーションにより検証を行ったが、その際、特に問題が多い産業廃棄物のケースとして、建設廃棄物を取り上げた。その結果、産業廃棄物への課税は、経済的インセンティブとして有効であるという結論に達した。産業廃棄物への課税は、トン当たり1,000円レベルで、約3%程度のリサイクル率の上昇、すなわち産業廃棄物の削減が期待できる。
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