研究概要 |
本研究では、計算可能一般均衡(CGE:Computable General Equilibrium)モデルを構築し、APEC貿易・投資自由化による実質GDPへの影響、各国の国内産業構造および雇用の変化をシミュレーション分析した。 Lee et al.(2000),"The Long-Run Impact of APEC Trade Liberalization on Real GDP and Sectoral Adjustments"では、APEC貿易自由化が2020年までに先進国と途上国メンバーの実質GDPをそれぞれ422億USドルと830億USドル増加させるという結果を得た。産業部門別では、各国で生産が増加する産業と減少する産業の違いが顕著になるが、日本では一般・電気機械、輸送機械、鉄鋼・金属製品などの資本集約的産業の生産が増加し、労働集約的な農産物、加工食品の生産が減少すると計測された。中国およびアセアン諸国では衣類などの軽工業だけでなく、電気機械産業の生産量も増加すると計測された。 日本を除いたAPEC地域では、貿易自由化よりも直接投資自由化の方が実質GDPに対してのインパクトが大きい。投資自由化は、特にアセアン諸国の製造業の生産および雇用を増大させる。また、製造業においては、APEC地域の貿易と直接投資には補完性があるということが実証された。主な結果は、2000年11月にシンガポールで開催された東アジア経済学会で報告した。 このプロジェクトに関連して、「日本の構造改革と東アジア経済への波及効果」、および「日本・シンガポール自由貿易協定の一般均衡論的評価」と題する論文もまとめた。前者は、2000年6月にメルボルンで開催されたグローバル経済分析国際会議で、後者は、2001年2月に神戸大学で開催された国際会議『アジア太平洋地域における貿易・金融システム』でそれぞれ報告した。
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