研究概要 |
オーストラリア,マレーシア,シンガポール,中国,台湾,そして,香港の各国において資料収集を行い,さらに収集資料について分析した。 マレーシアにおいては,Universiti Utara Malaysiaに滞在して,同国内での株式所有構造,配当性向についての統計資料の入手に努めた。この結果,つぎのことが判明した。第1に,マレーシアにおいては10ヵ年計画などの国家プロジェクトのもとで策定された,マレー系,インド系,中国系などの各民族を基準にする株主構成目標数値が存在しており,これが企業ガバナンスの中心であること。第2に,国家が強力な権限のもと,主な産業企業の主要株主となり,各企業を実質的にコントロールしていること。第3に,旧宗主国である英国の影響が依然強く,英国を起源とする国際会計基準をほぼ自動的に採用していること。第4に,公認会計士の資格について,英国,オーストラリア,カナダなどの英連邦構成国で取得した資格を,そのまま,マレーシア国内においても有効と認めていること。 なお,これらの第3と第4については,シンガポールと香港についても妥当する。 中国では,復旦大学,北京大学をはじめ多くの機関の協力を得た。中国の動向には大いに注意を要することが判明した。英米の最近の展開を速やかに導入しようとする国家戦略の下で財務会計・監査システムが構築されようとしている。会計士などの実務家の育成についても同様である。 東呉大学の柯 瓊鳳先生他と,金融派生商品についての共同研究を発表した。 監査人選任と配当規制の2点に焦点をおきつつ,コーポレート・ガバナンス問題の視点から各対象国の会社法の比較分析についての論文をまとめている。
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