研究概要 |
共通費配賦の問題は、古くから注目されてきた重要な研究課題である。なぜならば、恣意的な間接費の配賦計算は不正確な損益計算の原因になるからであり,製品の収益性の不正確な計算は誤った意思決定をもたらし,不公平な配分は逆機能的行動をもたらす可能性があるからである。したがって,これらの問題を解決するために,目的毎にどのような配分方法が適正であるのかを考察していかなければならない。 第一の研究課題は,共通費配分論の全般を鳥瞰することであった。共通費配分に関して何が問題とされてきたのかを明らかにした。特に,業績評価目的を前提とした配分に焦点を絞り込み,管理者をコントロールするために,共通費の配分はどうあるべきかを検討した。いわゆるノーマティブな研究である。その一方で,現実にどういう配分方法がなぜ使用されているのかを考察した。これは,ポジティブな研究である。どのような要因が配分方法にどのような影響を与えているかを,過去に行われた研究結果を基に再解釈した。 第二に,配分の必要性や配分方法の受容性に比べ,適応性については研究が遅れているといわれる。環境が変化し,戦略的適応が要請されるようになった時,組織形態が変化した時,管理者に新しい行動を引き起こさせることのできる配分システムを考えたいと思ったが,まだ,十分に研究できなかった。 第三に,間接費配賦の議論の延長上にあるABC/ABMに触れた。本研究では,ABC/ABMが,職能横断的組織の効率化にどのような可能性をもっているかについて若干指摘して今後の展望を行った。 第四に,国際レベルで,本社費・共通費の負担は具体的にどのように行われているのかを,本社への海外子会社からのキャッシュ・フローの回収,節税戦略の問題として考察した。
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