研究概要 |
トロントにおいてAMS講演[S4](一般講演ではなく,Special Session講演に採用されたものである)で発表した内容から説明を始めることにする.この講演では,研究分担者の川村氏との共同研究を通じて開発して来たワトソン法を紹介し、現在までに得られた結果と残された問題を提出した.本研究の理論的な根拠をそこに置いている一方,トロントAMS MeetingのSpecial Sessionに参加し,いろいろ有益な情報を収集できたが,その中で「Waveletを使うことによって佐藤超関数を導入できること」が紹介されていた[S1].これは直接には本研究に影響はまだ出ていないが,Waveletによって基礎付け可能な数学が,我々の研究においても有力であるという確信を得ることができた.その意味でワトソン法を更に強化する為の1つの有力な手段としてWaveletを引き続き研究してゆくことが不可欠となる.また,AMS Meetingの前後トロント大学に2週間滞在し,招聘状をいただいたF.D.Tall教授とは,主に理論的な基礎について意見交換及び情報収集を行った.[S3]では、本研究で購入したWork Stationとソフトによって計算した,3つのアフィン写像の不変集合として生成されるフラクタル図形512ケすべてのCGの表を完成させた.これは,文献[S2]において紹介されている不変集合としてのフラクタル図形の生成法を受けた研究である.この論文では「形の科学」の,いわばテスト画像として、素性のよく分かったフラクタルをこの方法ですべて(パソコンに計算させることで)リストアップすることによって,新しい位相不変量を導入するヒントが得られるものと期待している.ここで使用した方法によって出来るフラクタル図形の違いをうまく測る量はまだ発見出来ていないが,文献[S2]で触れられていない新しいフラクタル図形として、2つの図形が得られた.これらには,その他の図形と違って「うねり」のようなダイナミクスが感じられる.それらの持つ他のフラクタル図形との違いを表す適切な(位相不変量とはかぎらない)不変量はまだ見つかっていない,更に,帰国直後に得た情報によるとNobeling Universal spaceを3つのシンボル{0,1,*}(これには分離公理がT_4にもならないような位相を入れる)の可算無限ケの積空間に埋め込めることが証明された[S5].{0,1}の可算無限ケの積空間がカントール集合と同相であることに注意すると,この場合は「距離の入らないような一般的な」空間が我々の研究の基礎付けに成り得るという確信を得る. [S1]R.Ashino,C.Heil,M.Nagase,and R.Vaillancourt,Analysis with Multi Wavelets,957th AMS Meeting,University of Toronto,Ontario,Canada,September24,2000(講演番号957-42-259), [S2]H.-O.Peitgen,et.al.,Fractals for the Classroom : Strategic Activities,vol.3,Springer-Verlag,1999,ISDN 0-387-98420-8. [S3]津田光一,3つのアフィン写像によって生成されるフラクタル図形,愛媛大学工学部紀要Vol.20(2001,掲載決定). [S4]Koichi Tsuda,Variations of topological spaces due to Steve Watson,957th AMS Meeting(講演番号957-54-36),University of Toronto,Ontario,Canada,September23,2000. [S5]H.Tsuiki,The Computational Dimension of a Topological Space,preprint(Division of Mathematics,Faculty of Integrated Human Studies,Kyoto University).
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