研究概要 |
4次元多様体M^4のから3次元ユークリッド空間への無限階微分可能な写像に,一般に現れる特異点(ジェネリック特異点という)とM^4の関係を調べるのが本研究課題の目的であった.ジェネリック特異点は全部で4種類あり,定値折り目特異点,不定値折り目特異点,尖点,ツバメの尾特異点である.特異点としては,定値折り目特異点しか現れない写像のことを定値折り目写像あるいは特殊生成写像などとよぶ.定値折り目写像が存在するための必要十分条件は,M^4の微分同相類による特徴付けによって与えられることが我々の研究で既に判っていた.そこで,上記の写像に現れる4種類のジェネリック特異点を写像を変形することにより,どこまで消去可能か,あるいは消去できない障害を見いだすこと,が重要な問題となった.ツバメの尾特異点は,M^4が向き付け可能ならばいつでも消去可能であることが知られている(安藤の定理).したがって,尖点と不定値折り目特異点の消去可能性を考察するのが課題となる.不定値折り目特異点は,当然一般には消去不可能であり,その不可能性は4次元多様体の微分構造の違いに準拠する.そのような微分構造に関わる障害がどこに定義され,どのように計算可能か,を明らかにすることはかなり困難な問題で,残念ながらその事情を解明することができなかった.一方,尖点に関しては,Z_2係数の2次元ホモロジー群の階数が1に等しいような4次元多様体M^4に対して,尖点は消去不可能であることが証明できた.これに関係する従来の結果は,M^4が複素射影平面と同型なホモロジー群をもつ場合に尖点の消去不可能性が知られていたのみ(すなわちM^4の1次元ホモロジー群が消えている場合)であり,我々の結果はこれを拡張(1次元ホモロジー群に関する仮定が必要ないと)するものとなる.これによって例えば,S^1×S^3#CP^2と同型なホモロジー群をもつ場合に尖点の消去不可能性が証明されたことになる.
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