研究概要 |
3種類の生物が拡散によって移動し,同じ餌を求めてお互いに競争する系を考える.これらは3変数の反応-拡散方程式系として記述される.ここでは,第1種と第2種は動きが遅く,第3種だけが速く移動できるものと仮定する.第1種と第3種,あるいは第2種と第3種が共存している状況に,残りの種が侵入したとき,それぞれの種はどの様な時空間パターンを取るであろうか.この時空間パターンと生物学的パラメータ(例えば,種間競争係数など)とのかかわりを数学的に考察した.第1種と第3種の共存解は安定で,かつ第2種と第3種の共存解も安定,つまり双安定な状況で,フロント進行波解を特異摂動法を利用して構成し,その安定性を調べた.さらに,その解があるパラメータに関して大域的に存在する事も示した.次に「一次元的な生息領域で,第1種と第3種が安定に共存している状況に,両側からある程度の量の第2種が侵入した時どうなるか」を考察した.これには2つの場合がある.一つは,侵入種(第2種)が勝って,第2種と第3種の定数定常解に落ち着く.他の場合は,侵入種をブロックし,3種共存の安定な局在定常解(パルス定常解)に落ち着く.以上のことを特異摂動法,分岐理論を利用して数学的に示した.さらに,時定数を小さくすることによって,進行波解の枝にヒステリシスが生じ,進行波解が多重に存在することを示し,それらの安定性も調べた.さらにパルス定常解に関しても,次定数を小さくしていくと,安定から不安定に変化することを示した.さらに,空間2次元領域(無限に長い長方形領域)における1次元進行波解の安定性についても考察した.ある条件が満たされている時は1次元進行波解は安定であるが,その条件が破れると不安定化し,その結果界面は複雑な形状を取る.
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