研究概要 |
平成11年度は,スイスの数学者Prof.Maumaryとの研究討論に基づき,homotopy概念の代数的・圏論的定式化により超対称性との深い結びつきを共著論文S.Maumary and I.Ojima,"Supersymmetry and Homotopy"で明らかにした(論文はその後若干の修正が必要となり現在改訂作業中)。また,局所量子論でのマクロ変数と対称性の破れの一般的定式化に関する重要テーマとして,超伝導現象の本質的特徴を端的に表現するJosophson効果に関して,一般性の不明確な従来の導出法に代えて,隣接する2領域の秩序変数の差が引き起こす物理的効果としてのJosephson currentの本質を直截に表す簡明な導出法を見出した。関連テーマとして,局所量子論での局所温度状態の一般的定式化や対称性自滅のある場合への超選択則理論拡張の課題があり,前者はドイツのProfs.Buchholz,Roosとの研究を継続し,今年度末には共著第1論文が間に合わなかったが夏までに完成の予定。 後者は平成12年度の研究の主要テーマで,自発的に破れた対称性への超選択則理論拡張に必要な数学的道具の整備が主な課題である。非可換代数上に構成されたC^*-categoryを用いた群の淡中・Krein双対性が破れのない場合に重要なのに対して,今の場合は等質空間に対する対応物が必要で,homotopy-fiber categoryに基づく方法の有効性を発見し現在研究を継続中。標準的な超選択則構成法をdual netに適用して得られる破れのない部分群に関する結果と,上記結果とを組み合わせて破れた対称性とその作用を受ける場の代数を再構成するには,Goldstoneモード・秩序変数・表現代数の中心等を巡る数学的構造が重要で,Borel Seminar 2000で行った連続講演 ("Thermal Instability of SupersymmetryI,II")ではこのための理論的考察を行った。以上の二点を踏まえ,本年前半に課題の核心部分を仕上げる予定である。
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