研究概要 |
・セミディスクリート発展方程式のハミルトン構造,バイハミルトン構造の概念を,シフト作用素をもつ環上のスカウテン括弧式を用いて定義した.また戸田格子方程式などいくつかの方程式がバイハミルトン構造をもつことを示した.しかし,一般的にはバイハミルトン構造をもつセミディスクリート発展方程式は,連続の場合と異なり,かなり限られたものであり,実際に可積分であろうと考えられている方程式でも,我々の意味でバイハミルトン構造をもちそうにないものがあることも分かってきた. ・差分を用いた離散オイラー作用素を離散変分問題から形式的に導き,その性質を詳しく調べた.特に,シフト作用素を用いて定義される従来の離散オイラー作用素との関係を明らかにすることにより,新たに定義された作用素の核と像を求める問題に解答を与えた.またこのような離散オイラー作用素を用いて,従来シフト作用素を用いて記述されていた,セミディスクリート発展方程式のハミルトン構造の理論の一つの問題点を解消することが出来た. ・代数的Deift-Trubowitz型跡公式を基礎に,高次定常KdV方程式に同値な有限自由度のハミルトンの正準方程式を導いた.得られた方程式がLiouvilleの意味で完全積分可能であることがもとの定常KdV方程式よりもはるかに容易に示される.さらにそのような正準方程式はその解から代数的に構成される代数幾何学的ポテンシャルのスペクトルに関する情報を陽に含んでいることが示された.さらに,その方程式はある種の退化条件を満たせば,球面に束縛された調和振動子を記述するNeumann系に帰着されることが示された.またDubrovin-Novikov系との関連も明らかにされた. ・パンルヴェおよび離散パンルヴェ方程式の解,τ関数と対称性に関する研究を行った.特に,パンルヴェ方程式に関して,古典解に関する行列式表示から出発して,超越解を含む一般的な状況でも解の行列式構造が普遍的なものであることがわかった.また,離散系の解を議論するために特異点閉じ込めテストを利用することが有効であることがわかり,これを用いて離散パンルヴェ方程式の解や対称性について研究した.
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