研究概要 |
表現の誘導と制限の間には強い平行性が成り立つことは広く知られている。この研究においては巾零リー群に対し、軌道の方法の枠組みを用いて、この双対性を研究した。 共同研究者である、A.Baklouti、G.LionおよびB.Magneron氏の協力の下、次の主要な成果を得た。Gを連結、単連結な巾零リー群とする。 1.(Duflo-Corwin-Greenleafの可換性予想)χをGの解析部分群Hのユニタリ指標とし、χからGに誘導された単項表現τを考える。このとき、τの既約分解が有限重複度をもつときかつそのときに限り、χに随伴し、底空間G/Hをもつ直線束上のG-不変微分作用素環は可換である。 2.(Frobeniusの相互律)τの既約分解における既約ユニタリ表現πの重複度はπの(H,Χ)-半不変一般ベクトルの空間の次元に等しい。 3.表現の制限に対して、上記1の双対命題が成り立つ。つまり巾零リー群Gの既約表現πを解析部分群Kに制限するとき、その既約分解が有限重複度をもつのは、随伴するK-不変微分作用素環が可換であるときかつそのときに限る。 今後の課題として、τの既約分解が有限重複度をもつとき、問題の不変微分作用素環はGのリー環の双対ベクトル空間におけるあるアフィン部分空間上のH-不変多項式のなす多元環に同型であろうという、いわゆるCorwin-Greenleafの多項式予想の解決が待たれるが、同時にこの予想やFrobeniusの相互律およびプランシュレル公式を表現の制限に対して翻訳し証明することも興味ある問題である。
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