研究概要 |
1.筆者が得た準アーベル多様体の周期行列の標準形を使って、type q,kind 0の複素n次元準アーベル多様体が複素q次元アーベル多様体上の主バンドルとなることを示した。この証明の概略を、九州産業大学工学部研究報告第36号(平成11年)に発表した。 2.さらに、任意のtype q,kind sの準アーベル多様体C^n/Γに対し、同伴するtype q,kind 0の準アーベル多様体C^n/Γ_0が存在し、 (1)C^n/ΓはC^n/Γ_0の被覆空間となる (2)C^n/Γの準アーベル多様体の構造を定義するアンプルリーマン形式は、C^n/Γ_0から誘導して得られる ことがわかった。1と2の結果を総合すると、A.Andreotti-F.Gherardelli、阿部幸隆氏(富山大)による準アーベル多様体のファイバー構造定理が得られる。 3.上の結果を第3回日韓実・複素解析セミナ(6月、梨花女子大、韓国)、平成12年度日本数学会秋季分科会(9月、京都大)と第4回日韓実・複素解析セミナ(10月、広島大)で発表した。これらの結果の概要は第3回と第4回の日韓実・複素解析セミナのプロシーディングに掲載された。 4.2の結果を利用するとすべての準アーベル多様体がkind 0の準アーベル多様体から構成的に得られることが予想される。その構成の例を設備費および消耗品費で購入した計算機とソフトウェアを使って数多く作れることがわかった。現在、この例を含めて準アーベル多様体の構造に関する論文を作成中である。この結果をもって、今回の科学研究費の主要な課題は達成できたと思われる。
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