研究概要 |
実3次多項式写像族P_A,_B(z)=Z^3-3Az+√<B>A, B∈Rの力学系を考える。そのJulia集合が連結になるようなパラメータ(A, B)∈R^2の集合(connectedness locus)C_3の構造を解明する、特に実stretching raysの着地性と着地点の特徴付けを与える、というのが本研究の目的であった。 第1象限ではC_3の境界は2木の実解析的な弧Per_1(1),Preper_<(1)1>から成る。本研究の成果として、特に第1象限内のPer_1(1)の上方にあるstretching raysに対して、その上の不変量であるBottcher vecterが整数でなければstretching rayはPer_1(1)上のどの点にも着地しない、つまり、stretching raysはsin(1/x)のグラフのように振動し、その集積点集合は非自明な弧になるという驚くべき事実が証明された。証明にはparabolic implosionの理論が応用される。この結果はC_3が局所連結でないという性質と密接に関係している。Bottcher vectorが整数のstretching rayはPer_1(1)上Fatou vectorが同じ整数の点に着地することも証明できた。 Per_1(1)の下方にあるstretching raysに関しては、Shift locus内のraysはすべてPreper_<(1)1>の点に着地し着地点の特徴づけも完全になされた。危点が一つだけescapeする場合は、実2次多項式族に対する双曲的写像の稠密性定理を用いることにより、すべてのraysが着地することが示された。 このように、第1象限に関してはstretching raysの着地性は完全に解明された。ただし、4次の場合には有理数であっても着地することがある。3次の場合√<3>が無理数というのが効いているので、4次では使えない。同様の理由により3次でも第3象限では未解決の部分がある。更に、stretching raysの集積点集合の特徴付け、stretching raysのparametrizationと集積点集合との関係等、未解決の問題も残っている。以上の成果を達成する上で、本科研費による2回の海外出張が非常に有益であった。
|