研究概要 |
摂動的QCD処方を用いてB中間子がπ,ρ中間子ヘレプトンを伴った崩壊を行なう際の形状因子を計算した.結果は格子QCDやQCD総和則などの他の手法による計算とよい一致を示し,かつそれらの計算を補うものが得られた.この結果をD中間子への準レプトン崩壊にも適用し,(B中間子質量)≫(D中間子質量)≫(QCDスケール)という階層性の下に主要部分を計算した.結果はBファクトリー実験で得られたデータとよい一致を示し,摂動的QCD処方がD中間子という比較的重いハドロンに対しても有効であることが示された. またB→D_sπ崩壊へも摂動的QCD処方を適用して分岐比を求め,得られた結果とBファクトリー実験で得られたデータを比較することにより,素粒子標準模型における重要なパラメータの一つである小林・益川行列要素|V_<ub>|を求められることを示した.|V_<ub>|はレプトンを伴うB→π,ρ遷移の研究からも得られるが,両者を比較することで素粒子模型のチェックや摂動的QCD処方の妥当性を知ることができた.他のハドロンへの2体崩壊にもこの計算法を発展させる計算が現在進行中である. B中間子崩壊におけるCP非保存の初期の測定結果が素粒子標準模型による予言よりも大きめの値を出したことを受け,そのような大きなCP非保存を与えうる理論の可能性としてleft-right模型をとりあげて詳細な計算を行ない,右巻きカレントに結合するWボソンが重くても(1-10TeV)実験結果を再現しうることを示した.left-right模型には右巻きニュートリノが必然的に含まれており,その存在は実験で確認されたニュートリノ質量の問題と大きく関わっている.クォーク部分でのフレーバー混合行列の制限がこの研究によって解析されたので,これとレプトン部分とのつながりを今後考察することでニュートリノ振動について新しい知見が得られるものと思われる.
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