研究概要 |
現在の宇宙論において一般相対論は,宇宙の起源,宇宙の大規模構造の進化などを説明するために必要不可欠である.しかしながら基礎方程式であるアインシュタイン方程式は非線形偏微分方程式であり,その解の性質,時間発展を得るのは一般には非常に困難である.それ故に考える問題に応じて摂動的解法と数値的解法を使い分ける必要がある.本研究は非線形微分方程式の近似解法における手法である繰り込み群の方法に基づいたアインシュタイン方程式に対する非線形摂動論の構築を目指したものである.得られた研究成果は以下の通りである: 1)アインシュタイン方程式の長波長展開に対して,摂動項を0次解に含まれる任意関数に繰り込む事で,ゆらぎの長波長非線形成分の時間発展を表現する繰り込み群方程式の導出に成功した.この場合の繰り込みの操作は,アインシュタイン方程式の自由度をゆらぎの長波長成分のみに簡約化(縮約)する事に対応する.得られた繰り込み群方程式は,ブラックホール形成などの元々のアインシュタイン方程式が持つ非線形効果を定性的にうまく取り込んでおり,非一様宇宙のモデルとして応用可能であると期待される. 2)宇宙論における反作用問題を,繰り込み群の方法に基づいて定式化した.空間的に平坦なフリードマン宇宙を背景として,2次の摂動に対するゲージ不変量を計算し,そのゼロモードを摂動展開の永年項であると見なして背景時空への繰り込みを行った.その結果,非一様性に起因する背景時空への反作用効果を表す繰り込み群方程式の導出に成功した.得られた繰り込み群方程式は反作用の効果を取り込んだ有効的なスケール因子に対する時間発展方程式となり,その解の振る舞いを調べる事で,非一様性の存在によってフリードマン宇宙の膨張がどのような影響を受けるかを明らかにした.
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