研究概要 |
繰り込み群を駆使することによって,高温度での場の理論の性質,特に場の理論の相構造を求めることを目的として始めた当研究だが,より基本的な場の理論の構成の問題,ゲージ理論のゲージ依存性,およびゲージ理論のゲージ不変な取り扱いの3つの分野で成果を得ることとなった. 1.ゲージ理論を物質場の理論として定義する可能性はHeisenberg, Bjorkenにより唱えられているが,この可能性をより現代的に,K.G.Wilsonの繰り込み群の考えを使って議論した。摂動論では繰込み不可能な理論も,パラメターを調整することによってWard identitiesを満たす繰込み可能なゲージ理論になることを示した. 2.ゲージ理論においてグリーン関数はゲージによるが,ゲージ対称性のおかげで特別なゲージ依存性をもち,物理量はゲージに依存しない.グリーン関数がどのようなゲージ依存性をもつかは,ゲージ対称性そのものを理解するうえで重要である.本研究では,Procca型の質量項があるQEDのゲージ依存性を,厳密に求めることに成功した. 3.ユニタリ・ゲージの利点は,物理的な自由度のみを扱うことだが,グリーン関数は繰り込み不可能であることが欠点とされてきた.アーベリアン・ゲージ理論におけるゲージ不変な複合場のグリーン関数はユニタリ・ゲージで繰り込み可能であることを示した.また準備中の論文では,Higgs2重項のあるSU(2)ゲージ理論のユニタリ・ゲージにおける繰り込みや,ユニタリ・ゲージを使ったColeman-Weinberg機構のゲージ不変な取り扱いについて発表する予定である.
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