研究概要 |
本研究では、構造を持った半導体超格子中にコヒーレントフォノン波束を生成し、時・空間領域でのコヒーレントフォノン波束のダイナミクスを研究した。特に、2色ポンプ・プローブ法を用いてポンプ光とプローブ光の波長を変え、フォノン波束の生成領域と検出領域を人為的に選択することで、フォノンダイナミクスを調べた。 GaAs/AlAs超格子において,2色ポンプ・プローブ測定法を用い,コヒーレント折り返し音響フォノンを測定した.1色ポンプ・プローブ測定法で得られた結果と比較した結果、有限の波数を持つ折り返し音響フォノンの波数は検出光の波長によって決まることを見い出した。また、試料に対する光の侵入長の違いを利用することで、フォノン波束の伝搬を時間領域で直接観測する事ができた.(K.Mizoguchi, et al. Phys. Rev. B50(1999)8262)。 同位体半導体超格子におけるコヒーレント閉じ込め光学フォノンの測定を行った.その結果,ポンプ・プローブ法で観測されるコヒーレント閉じ込め光学フォノンの次数は偶数のモードであることを見い出した.この結果はラマン散乱で観測されモードと一致している。ポンプ光の偏光依存性は、非極性半導体超格子におけるコヒーレントフォノンの生成メカニズムが誘導ラマン散乱であることを示していた。(M.Nakajima, et al., Phys. Rev., B63(2001)161304(R).) 有限周期のGaAs/AlAs半導体超格子(空間が制限された場合)における折り返し縦コヒーレント音響フォノンの特性について調べた。ポンプ光とプローブ光の波長が同じ1色ポンプ・プローブ法で測定した結果、周期数が少ない20周期の(GaAs)_<10>(AlAs)_<10>超格子では、モードの対称性が破れのために,ラマン不活性なB_2モードが新たに現れることを見い出した。さらに、運度量保存則に破綻によって,観測されている各モードの緩和時間が非常に短くなることを見い出した。これは、自由誘導減衰が生じ、緩和時間が短いモードとして観測されたものと考えられる。(K.Mizoguchi, et al. J. Phys. Cond. Matter, 14(2002)L103.)
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