研究概要 |
本研究では,HfNCl系のファンデアワールスギャップを利用した研究として,無機ポリマー膜化を試みた.また同時にこの新しい擬2次元超伝導体の構造と物性について調べた.無機ポリマー膜化については層間を広げたLi_x(THF)_yHfNClについて,ピリジン,ジメチルスルホキシド,N,N-ジメチルホルムアミド,N-メチルホルムアミドの各極性有機溶媒により試みたが,残念ながら成功しなかった.しかし,中性子を用いてNa_<0.29>HfNClおよびLi_<0.19>ZrNBrの超伝導体の構造の決定に成功した.酸化しやすいこともあり,現在も我々以外にこれらの超伝導体の構造を決定したグループはない.また中性子散乱により,一部のフォノン状態密度が,転移温度以下で増加するという異常を見出した.このフォノン状態密度異常については,銅酸化物高温超伝導体で測定されている同様な実験結果と比較することで以下のように解釈できる.元々銅酸化物超伝導体でも同様なフォノン状態密度の異常が見つかっていたが,それらのフォノンモードで,最近次々にフォノン分散に異常が見つかった.この異常を電荷の不均一化(動的CDW又はストライプ)の観点で考え直すと,一見異なるこの2種類の超伝導体で,共に電荷の不均一化により光学フォノンの分散に異常が起こったと考えられる.3次元系のBa_<1-x>K_xBiO_3でもこのような異常は見られており,見かけ上異なる様々な高温超伝導体に,電荷の不均一化の存在という隠れた共通点があることがわかった.
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