| 研究概要 |
本研究の主な成果は(1)WKB法を用いた多体交換相互作用の計算方法の開発、(2)2次元ウィグナー結晶における多体交換相互作用の計算と(3)2次元固体ヘリウム3における多体交換相互作用の計算である。(1)においてはインスタントン法と数値計算の組み合わせによってWKB法の範囲内で高い精度で交換相互作用定数が計算されるようになった。(2)において,(1)で開発したWKB法に基づく計算方法を用いて、通常の2次元ウィグナー結晶における交換相互作用のほかに、磁場下における交換相互作用および2重層ウィグナー結晶における交換相互作用の計算も行った。磁場下においては電子が磁場と結合することによって交換相互作用そのものにアハラノフボーム振動が現れ,それが結晶の磁気的な性質にさまざまに影響を与えるという興味深い結果が得られた。現実に2次元ウィグナー結晶を実現することは容易ではないが,電子系を2重層にすることによってより容易に結晶状態を実現することができると考えられている。この場合の交換相互作用も計算し,この系が1次元反強磁性ハイゼンベルグハミルトニアンでよく記述されることを示した。(3)の固体ヘリウムについては、基盤ポテンシャルが交換相互作用に与える定性的な影響を調べ,これによって高密度領域とは異なる交換相互作用の密度依存性を明らかにした。以上の研究成果は、5編の論文(内2編は現在印刷中)、1回の国際会議において発表されている。
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