研究課題/領域番号 |
11640343
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
樋渡 保秋 金沢大学, 理学部, 教授 (20019491)
|
研究分担者 |
井川 敦志 (井川 淳志) 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (80243004)
星野 英興 弘前大学, 教育学部, 教授 (30001861)
遠藤 裕久 福井工業大学, 工学部, 教授 (40025284)
池本 弘之 富山大学, 理学部, 助手 (20262496)
小田 竜樹 金沢大学, 理学部, 講師 (30272941)
|
研究期間 (年度) |
1999 – 2000
|
研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
|
配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2000年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
1999年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
|
キーワード | 半導体-金属転移 / 液体-液体相転移 / カルコゲナイド / intermolecular interaction / infrared absorption / polarization / 高圧セレン / FLAPW / 電子状態 / 高圧 セレン / ヒ素カルコゲナイド / 液体カルコゲン |
研究概要 |
(1)液体As-Te混合系(10,20,33,40at.%As)について、電気伝導度、ホール係数及び磁気抵抗の測定を行った。電気伝導度及びホール係数の測定から、高温500℃近傍で系は半導体から金属へ転移すること、As濃度の増加によりこの転移温度が高温側ヘシフトすることが明らかになった。また、高温高圧下における電気伝導度を測定し、加圧により電気伝導度が増加することを見出した。磁気抵抗△ρ/ρは半導体領域では0で、温度上昇に伴って金属化が始まると△ρ/ρが出始める(その符号は正)。△ρ/ρを電気伝導度σの関数としてプロットすると、Asの濃度及び温度に無関係に△ρ/ρはσでスケールされる1つの曲線上に乗る。これらの結果から、金属化した系の伝導は鎖間のTeを経由すると結論される。液体As-Te混合系(10,20,33,40at.%As)の構造について、中性子回折実験及びEXAFS測定を行い、検討した。中性子回折実験から得られた構造因子S(Q)のQ=1.5Å-1近傍に弱いFSDPが見出された。FSDPの出現は-Te-As-As-Te-あるいは-Te-As-Te分子状のクラスターの存在を示唆する。また、全対分布関数g(r)の第1ピーク解析から得られたAs-Te混合系の部分分布関数gTe-Te(r)は、液体Teのg(r)と類似していることが明らかになった。また、Asに近接するTeの配位数はほぼ1.8で、Te-Asボンドが強いために温度変化が小さい。一方、Teに近接するTeの配位数は温度上昇により急激に減少する。温度上昇によりTe-Teボンドの熱的切断が容易に起こり、鎖長が短縮することを示唆する。EXAFS測定からは、500℃近傍で3配位のAs原子と2配位のTe原子からなるネットワーク構造が崩壊し、As原子が2配位、Te原子が1配位で鎖端原子となる1次元鎖状構造へ転移することを見出した。さらに、中性子回折の解析結果をもとに、EXAFSデータからTe-Teボンドについて検討した。Te-Teボンドに長・短2種類が存在すると考えると、短いTe-Teボンドの配位数は温度上昇に伴って減少する。また高温領域において、長いTe-Teボンドの配位数が増加することが明らかになった。これらの結果から、液体As-Te混合系の半導体-金属転移は、2次元ネットワーク構造から1次元鎖構造への構造想転移と鎖端のTe原子の出現が関係すると結論される。 (2)平成11-12年度に渡って、セレンにおける圧力誘起相転移と電子状態について密度汎関数法を用いた研究を行った。常圧相から最高圧相に渡って一通りの結晶構造において電子状態計算を終了し、圧力印加による電子状態変化と原子構造変化の概要を明らかにした。各々の相では、すくなくとも単位胞内の原子位置の最適化を行い、より現実的な電子状態を求めた。波動関数の各原子軌道への射影成分を計算することにより原子間の結合状態や孤立電子対を議論した。特に重要な成果は、これまで明らかにされなかったSe-I(六方晶)相から、Se-II(単斜晶)相への構造相転移時の構造変化のモデルを提案したことである。Se-I相の孤立電子対が相転移によって一部消滅してSe-II相に転移して行くことがわかった。さらに圧力を加えられた状態のSe-III(高圧単斜晶)相では、残りの孤立電子対も消滅し、完全に金属的電子状態になった。次に、Se-IV(斜方晶)相からSe-V(三方晶)相への2次の相転移を電子状態の点からも正当化できるSe-IV相の構造モデルを提案した。提案した構造モデルの原子配置は、X線回折実験の結果とも矛盾せず、高圧下ので実験データが限られている中で、原子位置の最適化計算を組み合わせることで単位胞内の原子位置を特定し空間群の決定に至った。
|