研究概要 |
A.自発分極を伴う格子の変形は磁気秩序にどんな影響を及ぼすか? B.磁気秩序が引き金となって起こる強誘電相転移はあるか? C.誘電的性質の測定は秩序磁性の研究にどれだけ有効か? の3個の問題を立て,具体的な物質RFe_2O_4,ZnCr_2O_4,RMn_2O_5,RMnO_3の磁気的,電気的性質を調べた.主な結果は以下の通りである. 1.LuFe_2O_4で見られる低周波誘電分散の温度,周波数を詳しく調べ,理論的予測と比較した.また,この物質で自発分極の存在を直接に示した.また,YFe_2O_4で,対称性の異なるいくつかの電荷秩序相が逐次的に現れることを見出した. 2.ZnCr_2O_4では,ネール温度12.5Kに誘電率の飛躍的な変化があること,さらにこれよりも高温側の広い温度領域で低周波誘電分散のあることを見出し,それらの原因を反強磁性形成に伴う結晶格子の変化,あるいは反強磁性短距離秩序に関係付けて議論した. 3.YMn_2O_5の反強滋性相のスピン構造を特標する伝播ベクトルの温度変化を明らかにし,特に,ネール温度直下で結晶格子と不整合であったスピン構造が,強誘電性キュリー温度で整合に,続いて第2の誘電性相転移_2で再び不整合になることを見出した. 以上の結果、ならびにメスバウアー効果および現象論による解析によって,RMn_2O_5では,反強磁性長距離秩序の形成が自発分極の原因となるMn^<3+>と酸素イオンとの相対変位を引き起こしているという描像に達した. 4.強誘電性HoMnO_3,ErMnO_3,YbMnO_3で,希土類スピンの配列を推定した.
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