研究概要 |
1)電子状態計算手法の整備・開発 変分APW法の詳細を公刊した.また,変分APW法の基本的アイディア(マフィン・ティン球半径の変分的決定)がLMTO法やASW法に対しても適用可能であることを確認した.また,電子状態レベルでイオンのダイナミックスを記述するためにタイトバインディング(TB)法に基づく分子動力学シミュレーション法の開発を行った.MPI(Nessage Passing Interface)を利用することにより複数のコンピューターを同時に使用できる並列計算アルゴリズムを組み込み,計算を格段に高速化した.今後の課題は第一原理的な変分APW計算から如何にTBパラメターを抽出するかである. 2)p-d状態混合強度とイオン伝導度 一連の貴金属ハロゲン化物,AgXおよビCuX(X=C1,Br, I)、について変分APW法に基づく電子状態計算を行うことにより,p-d状態混合強度とイオン伝導度との相関を包括的に調べた.p-d状態混合強度を特徴づけるパラメター「generalized covalency」を新たに導入し,超イオン伝導性発現の基本要因として提案している「弱いp-d状態混合の実現」が普遍的に成立することを確証した.貴金属ハロゲン化物について簡便なTB法を用いた電子状態計算も行った.TBパラメターを適切に取ることにより,変分APW計算に基づいてすでに得られたp-d状態混合強度とイオン伝導度との相関関係の結果を定性的に再現できることを示した. 3)その他の関連研究 超イオン伝導性ガラス(Ag/Ge/Se)の構造やダイナミックスを分子動力学シミュレーションによって明らかにした.特に銀原子クラスター化の前駆現象を発見し,その詳細を明らかにした.二酸化チタン(超イオン伝導体の母物質)のナノ粒子の焼結過程を電荷可変型ポテンシャルに基づく分子動力学シュミレーションで調べ,基盤結晶構造の違い(rutile, anatase)によって焼結ナノ構造体の特性が定性的に異なることを見出した.
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