研究概要 |
今までの地震計は振り子で慣性不動点を作り,錘と大地の間の変位を測定していた.この研究では,機械式振り子の温度等による特性変化を改善して高感度化すべく,新しい原理の地震計を開発してきた.その原理は,平行磁場内に磁場外部で軸を固定した永久棒磁石を設置し,その磁場による回転モーメントを棒磁石の一端に付けた錘の重力で打ち消す無定位回転型振り子である.この研究では平成12年度末までに以下の結果を得た。1)回転型振り子と磁気バネを使った振動検出の試作機を製作し,実験室での評価試験を行った。結果は,地震計の検出周波数帯域や感度の指標になる振り子の自然周期が10秒以上であることを確認した.既存の広帯域・高感度地震計の自然周期は10から20秒程度であり,本試作機はそれに匹敵する性能を有している.2)試作機にフィードバック回路,静電容量型変位センサ,フィードバックコイルを取り付け,本検出器がサーボ型地震計として動作することを確認した.しかしながら現状では最適パラメータでは無いので,今後に検討の余地を残している.3)試作器に付属する磁気バネで,振り子の自然周期を長くしたり短くしたりできた.その値は理論計算による値と調和的である.4)永久棒磁石を軸で支えた回転型無定位振り子の場合,それに作用する磁場の均一性が重要である。試作機により窓枠型永久磁石の磁場測定を行い10^<-3>の均一性を確認した.しかしより長周期での高い安定性を得る為には,磁極の構造を変更しさらなる磁場の均一性が必要である.5)回転型振り子では軸を支えるヒンジの金属も重要である。その為,ヒンジに使用できるバネ常数の温度係数が小さい恒弾性金属(ハイテリンバー等)を入手した.今後,それを試作機に取り付ける。5)以上の評価から,回転振り子が原理的に動作することが確認され,長周期で安定化させる磁場の均一化や恒弾性金属の採用等の改善法も見いだせた.
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