研究概要 |
マーズパスファインダーの探査により火星にコアの存在することが明らかにされた。しかし火星程度の大きさの場合、その集積エネルギーは、地球や金星の場合に比べ一桁小さく、このため火星の場合、地球、金星に関して推定されるような、集積過程中の大規模なマグマオーシャンの形成は起こりえない。これはコアの形成が集積時でない事を示唆する。とすると、その形成はその後ということになり,問題はその時期が何時かということになる。コア形成に伴って惑星の半径は変化し、従ってその膨張と収縮の過程は地表付近のテクトニクスに残される。現在,あるいは将来の火星探査により,いずれそのテクトニクスが明らかにされるであろうが,その前にコア形成過程の詳細を理論的に推定しておくことは重要である。従って本研究では,(1)火星集積過程中の熱史とその際の金属とケイ酸塩鉱物の分離,及び(2)その後の熱史におけるコア形成過程について,研究を行った。具体的には,それらの過程の、数値計算のための計算コードの開発と,それを用いての数値計算の実施である。初年度は,一番目のテーマに関して数値計算コードの開発を行い,それを用いて予備的な数値計算を行った。次年度は,初年度の数値計算の継続と,二番目のテーマに関して数値計算コードの開発と数値計算を行った。その結果,集積過程後期に,金属とケイ酸塩鉱物の分離が起こり,火星形成直後の内部構造として,中心に冷たい未分化コア,その上に溶融した金属層,その上に分化した岩石層という三層構造の得られることが明らかにされた。それぞれの半径は,集積する微惑星の最小質量と,微惑星衝突時の等圧核の大きさによる。これらの計算結果を初期条件にして,その後の熱史とコア形成過程の数値計算を行なった。その結果,コアの形成は,重い金属層とその下の軽い未分化コアの入れ替わりによって起こること,その形成時間は未分化コアの粘性率構造とその値によることが示された。コアの形成時期としては,集積後約20億年と推定される。
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