研究概要 |
本研究目的はGlacial Rebound(数万年スケール)に応答した地球回転速度の変化や極移動に,地球内部の粘性率分布・670kmの密度不連続面・上部マントルに存在する非断熱密度分布がどのような影響をもたらすかを定量的に評価することである. 地球表層の質量再分配に伴う地球内部の変形は,粘弾性応力と浮力のバランスで決定される.当然,Glacial Reboundに関係する極移動や地球回転速度の時間変化は,上部マントルの非断熱密度変化や密度不連続面の応答の情報を含んでいるはずである.この研究において,これらの非断熱密度変化が地球のレスポンスにどのように影響を及ぼすかを定量的に調べ,次数2(波長がほぼ2万kmで地球回転に関係した次数)の変形において最も大きいことを明らかにした. これらの成果を踏まえ,過去2万年間の氷床融解に伴う極移動の計算を行った.その結果極移動は670km密度不連続面の変形モード(M1モード)とリソスフェアの粘性率に強く依存することを明らかにした.リソスフェアの粘性率に依存することは,fluid tidal Love number (k_<f'>)に強く依存することを意味している.M1モードの強度をΔk_2とおくと,その相対強度はΔk_2/k_fで表わされる.リソスフェアが弾性体の時のΔk_2/k_fは,粘弾性体の時の値に比べ大きく,M1モードの効果がみかけ上大きく見積もられる.これらの研究により,今まで極移動は下部マントルの粘性率とリソスフェアの厚さに依存し,地球回転速度は下部マントルのみに依存するとされてきたが,本研究により,どちらも下部マントルの粘性率のみに依存することが明らかになった.
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