研究概要 |
この研究課題において次の4つの研究を主要におこない,以下のような成果を得た. 1.五島灘海域の地震波断面を利用して堆積システムの3次元的広がりを復元し,その鮮新世以降の変遷を検討した.その結果,次のような結論が得られた. リフト発生期-海進期:鮮新世4Maごろ,北西-南東の正断層系と南北方向の正断層系に区切られた南東端の海域が沈降し,北西-南東方向の軸をもつリフトが発生し,同方向の軸を持つエスチュアリー地形が誕生した. 最大海進期:鮮新世後期3Maごろにリフトの沈降最大期となり,MFSが作られる.リフト系は東西方向となり,北西-南東方向の正断層は,この方向の断層に切られている.この時期の温暖気候とこの地域と周辺の沈降によって日本海に向かう暖流系が成立することによって,この海域のMFSにはプランクトンが増加することになる.また,火成岩の貫入がおこり,最大沈降域の一部は反転して上昇を開始する. 高海水準期:更新世(2Maごろから現在)になると氷期間氷期の繰り返しによって,北東側の九州西彼杵半島側からのデルタの前進と後退の繰り返しによって数十万年周期の第四オーダー堆積シーケンスを形成しながら,リフトの埋積が進行した. 2.日本列島形成以前の大陸河川堆積物である北海道の古第三系石狩層群において,その化学組成,続成作用と孔隙率の関係などを検討した.その結果,河川成砂岩の化学組成には後背地を反映した多様性があることと,砂岩中の孔隙は全て続成過程における二次孔隙あることが明らかになった. 3.背弧堆積盆地である新潟堆積盆地の新第三系において,堆積岩中の有機物組成から堆積物の起源と古海洋関係の関連を検討した.その結果,有機物組成が有効な堆積環境指標となることがわかった. 4.ODP174A次航海で得られた更新統コアの粒度分析結果と堆積シーケンスとの比較をおこない,陸棚において海水準変動が粒度組成と堆積シーケンスを支配していることを明らかにした.
|