研究概要 |
本研究では地殻衝上帯において,地殻深部変成岩が延性的変形と脆性的変形を重複して受けていることに着目し,シュードタキライトを伴う地震性の脆性的剪断向とマイロナイト片理面との関係を解析し,地震性の脆性剪断作用が先行する延性的剪断作用といかなる関係にあるか,応力場と運動方向や条件の関係を考察した.研究対象は領家変成帯,八幡浜大島変成岩体および下伊那和田地域の下部マイロナイト帯,日高変成帯上部変成岩層である.八幡浜大島では,4ステージのマイロナイト化とシュードタキライトの形成を伴う地震性の脆性剪断帯があり,シュードタキライトは延性変形を受けている.この断層帯の詳細な観察の結果,地震性の脆性断層と延性変形が繰り返し起こっていることが判明した.この運動は大島変成岩層が三波川帯に衝上する上盤西ずれの運動に関連し,上盤西ずれのマイロナイト化作用IIの運動と一連と見なすべきとの結論を得た.このことは内陸地震の発生場所が,地殻の衝上に伴う断層に沿っていることを予想させるものとして重要な意味をもつ.一方,下伊那におけるマイロナイト帯に,マイロナイトの片理に平行な脆性剪断面に,今回新たにシュードタキライトを発見した.このシュードタキライトは気泡を有し,母岩の条件からみても.比較的浅いところで形成されたものである.この点は,八幡浜大島の場合と異なる点であるが,マイロナイト化作用の応力場を引き継いでいる点は同じである.このことから,地殻深部層の衝上運動が,延性的剪断運動から脆性的剪断運動に連続し,この過程で地震性の剪断破壊が起こることを示すものであり,このシュードタキライトの発見は八幡浜大島の結論を支持補強するものである.
|