研究概要 |
八ケ岳東麓には中期更新世の湖成層が厚く発達しており,この湖成層中に八ケ岳を給源とするテフラ層が挟在する.この湖成層には年縞様の縞模様が発達し,これらを解読することによって,山麓からみた長周期の火山活動史が読める.この研究ではこの湖成層を含む「上部南佐久層」の詳細な層序を確立し,この時代の湖の広がりとその後背地の推定のための地質調査を行ない1/3,000地質図を作成した.さらに,縞状構造の発達する湖成層が厚く発達する分布中心付近の小海線信濃川上駅裏の露頭で一枚一枚の縞を0.1mmの精度で記載した.もしこれが年縞ならこの露頭だけで3,000年程度の記録が保存されていることになる. 詳細な年縞様縞の層厚から,クラスター分析によって周期性を検討したところ40年周期の変化が読み取れたことと,間に挟まれる洪水起源と考えられる砂層の挟在周期もほぼこれと一致することがわかった.一方,シルト質粘土と極細粒砂による縞の成因については,EPMによるFeやMgの含有比率の周期的増減などから年縞である可能性が高いことがわかったが,珪藻化石のフローラ解析などによって春縞と秋縞を確認した.また,この縞状湖成層に挟在する降下スコリア層上下の花粉分析の結果からスコリア降下による植生の変化は草本類の変化以外はあまりみられないことがわかった. このような研究結果と従来の地質調査結果や古気候復元研究成果との対応や分析結果相互の比較検討のために1999年12月,2000年10月に東京と諏訪市で研究協力者を交えたシンポジウムを開催した.火山灰分析による地質年代に関しても20万年前後の年代が確定した.この結果は論文集「第四紀」33号にまとめた.
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