研究概要 |
平成11年度〜平成13年度に「四万十帯における海嶺沈み込みと白亜紀末〜古第三紀テクトニクスに関する研究」を進めた結果,以下の成果が明らかとなってきた. 1.南西諸島の奄美大島から九州・四国・紀伊半島・赤石山脈の四万十帯,および北海道の日高帯にかけては,白亜紀末〜古第三紀にかけての古日本列島弧に沿った海嶺の沈み込みを示唆する「現地性玄武岩類」が報告されている.上記地域の間隙となる志摩半島南部の四万十帯の調査を実施したところ,現地性玄武岩類の産状は見られず,この地域では海嶺沈み込みが起こっていなかった可能性が高い.トランスフォーム断層による海嶺の不連続,などの可能性が推定される. 2.白亜紀末〜古第三紀にかけての放散虫化石による生層序学的年代区分の制度を高めるために,北海道の白糠丘陵に分布する根室層群から試料を採集して,検討中である.試料の処理方法として,「ボロン法」を固結岩からの放散虫化石の分離方法として適用したところ,非常に有効であることが確認できた. 3.放散虫化石の走査型電子顕微鏡写真・透過型顕微鏡写真の画像の電子ファイル化を進めている.データベース化して公開を準備中である. 4.化石放散虫研究の一環として,現生放散虫の調査を開始した.紀伊水道において定点を定めて,放散虫の季節変動を調査中で,放散虫の季節変化の結果がまとまりつつある. 5.研究期間中の2000年9月14日から24日アメリカ合衆国カリフォルニア州ブレスデン市において開催された第9回国際放散虫会議において本研究でそれまでに得られた成果を発表し,関係分野の研究者と議論を行った.ニュージーランドの後期白亜紀から古第三紀までの放散虫化石について研究した,C.J. Hollisと討論することによって,北半球地域と南半球地域での放散虫化石の対比について検討可能であることがわかった.
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