研究概要 |
北海道から関東・北陸に至る地域の中期中新世浅海成層について,層位学的検討と有孔虫群集の解析を行い,以下の結果を得た. 1)北海道各地の中部中新統を調査し,歌登地域のタチカラウシナイ層・志美宇丹層,厚内・阿寒地域のオコッペ沢層,今金地域の貝殻橋層などが,いずれも12Ma以前の寒冷化直後の浅海成層であることを認定した. 2)北海道中部,留萌地域の峠下層は12Ma〜8Maの地層であるが,堆積初期の中央部と,中部層準のみが浅海域で,それ以外は概ね漸深海環境で形成された.また,北部地区に分布する砂泥互層は深海性タービダイトで,約14Maの古丹別層に相当する. 3)北海道南部,上ノ国地域の大安在川層において亜熱帯性大型有孔虫Miogypsinaを再発見した.これについては,古生物学会例会において報告を行った. 4)山形県尾花沢地域の銀山層はおよそ11.5〜10.5Maの浅海堆積物で,底生群集は温帯域の浅海環境を示す. 5)栃木県烏山地域の小塙層は15〜13Maに徐々に深海化するが,おおむね温帯域の浅海環境にあった. 6)北陸地方の砺波地域の黒瀬谷層・東別所層・天狗山層,および能登半島地域の七尾石灰質砂岩層・須曽層(七尾・能登島)・関の鼻石灰質砂岩層・東院内層・法住寺層(輪島・珠洲)について,層相解析を行うとともに試料を採集し,微化石層序の検討と群集解析を行った. 7)有孔虫カタログのデータベースを立ち上げ,検索システムの使用を開始した. 8)本研究の結果,中新世最温暖期(Mid-Neogene climatic optimum)以後の寒冷化が始まるは,早く見積もっても北海道の東部と北部で12Ma頃であり,東北地方中部に達するのは10Ma以降と推定される.
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