研究概要 |
厚歯二枚貝は、テチス海の縁とそれに隣接した地域にジュラ紀の終わりから白亜紀の終わりにかけて生きていた二枚貝である。この固着性の底生生物は炭酸塩プラットフォーム環境で繁栄し、重要なorganic builderや堆積物の生産者として各地の白亜紀の地層から豊富に産出するが、二枚貝としては特異な殻形態をもつ。ジュラ紀後期に1科が出現、白亜紀には6科100属を超すまでになった。この上科の多様性の増加は、普通の二枚貝の形態からすれば実に奇妙な殻形態と、殻の微細構造にともなわれている。 そこで、この二枚貝の一群の爆発的進化にどのような背景があるのか解明するために、本研究では殻の微細構造の研究と野外での産状に重点をおいて研究することにした。 まず、Hippuritesについて、円錐状の殻を覆う薄い殻の管系について殻の連続切片をづくり、管系と成長線の関連を調べた。その結果管系は、成長とともに殻が溶かされ、また再分泌することによって作られることがわかった。管系の3次元画像を軟エックス線によって得る試みも行ったが、今のところ成功していない。 現生の二枚貝でも、共生藻類にたいして、十分な光を供給するために殻が透明になったり、あるいは、殻後部が以上に発達したりと、藻類と共生していない普通の二枚貝からは、大きく外れた形態をとっている。そこで、現生の光共性の二枚貝との形態学的比較から、厚歯二枚貝における光共生関係があったのかなかったのかについて検証を行うことを目的に、いくつかの化石種について、検討を行った。 以上の目的をもって平成11年9月から10月にかけての約3週間にわたりドイツ・オーストリア・スロベニア・イタリアの模式的な産地を訪れその産出状況を調査するとともに、各国の研究者と意見交換を行った。 さらに、厚歯二枚貝の教科書として有名なCestari, R. and Sartorio, D.(1995)によるRudisto and facies of the Periadriatic Domain (Agip, S.p.A., S.Donanto Milanese)の翻訳を行った。
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