研究概要 |
本研究では,ペルム紀-三畳紀におけるパンサラッサとパレオテチスの両海域で形成された遠洋成深海〜浅海成陸棚堆積物中から放散虫化石を摘出し,放散虫化石群集の解析から両海洋域の古環境と両海洋の連関を明らかにするとともに,両海洋を含めてペルム紀-三畳紀境界でおこった大規模な古海洋変動の実態をグローバルに検討することを目的とした. 検討した主な地域と試料は,(1)西南日本美濃帯郡上八幡・犬山地域の付加体中の層状チャート層(パンサラッサ低緯度域の遠洋成深海堆積物),(2)南中国揚子地塊上の四川・貴州・広西地域の砕屑岩層・酸性凝灰岩層(パレオテチス東縁部低緯度域の浅海堆積物),(3)南中国雲開帯欽州地域の層状チャート層(パレオテチス/パンサラッサ接合部の低緯度域の遠洋成深海堆積物),(4)南西中国昌寧-孟連帯雲南地域の層状チャート層・酸性凝灰岩層(パレオテチス低緯度域の深海及び浅海堆積物)である. パンサラッサ遠洋成深海堆積物中のペルム紀放散虫化石群集は多様性が高く,現在の太平洋低緯度域と同様な生産性の高い海洋古環境が想定される.一方,揚子地塊上やその周辺のパレオテチス域ペルム紀放散虫化石群集はいずれも低緯度域のものであるにもかかわらず,多様性は高くない.このことはパレオテチスが海洋深度や海洋の広がりにおいて,パンサラッサとかなり相違していたことを反映すると考えられる.ペルム紀-三畳紀境界では,両海洋において急激な放散虫大量絶滅が起こったことが明らかになり,グローバルな海洋古環境の変化が想定される.両海洋のペルム紀-三畳紀境界を通しての遠洋成深海堆積物において,両者間で類似した岩相変化がみられることもこのことを示唆する,また,三畳紀古世後期から放散虫群集の回復が,ほぼ同様に両海洋で進んだことも明らかとなった.
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