研究概要 |
咬耗形象を最古の長鼻類であるフォスファテリウムから現生長鼻類まで咬耗形象の観察を行い、咬耗面形態の変遷をたどった。その結果、長鼻類の咬耗面形態およびその機能の変遷は大きく分けて三段階あることが明らかとなった。 ギロチン型,頬舌運動型,そして前後運動型である.ギロチン型が最も古く,一般的な有蹄類の咬耗面が単純化したものである。頬舌運動型このギロチン型から派生したものであり、さらに前後運動型は頬舌運動型より派生している.ゾウ上科における咬耗パターンの基本を押さえるためPhiomiaの咀嚼面をSEMで観察した.その結果,三つのファセットのカテゴリーが認識された.多数の平行して走る条線が谷の斜面に発達するが,ピットは間咬頭などに良く見られた.こうした咬耗パターンは深く上下の臼歯がかみ合うことによって出来るのだろう. Phiomiaの咀嚼面に見られたパターンがゾウ上科のさまざまなグループでどう分布するかを見た.Sinomastodonやマムート科ではPhiomiaの咀嚼面に見られたパターンが保持されていた.しかし,Gomphotherium, Cuvieronius, Anancus,ステゴドン科およびゾウ科では,咬耗パターンに変化が見られた.これは咬合関係の変化を示している. 槻木層より産出した変形したStegolophodonの復元を試みた.その結果,他の日本産のステゴロフォドンとの対応が明らかとなり,その一部は島嶼化にともなう矮小型のゾウであることが示唆された.これは.矮小型のゾウでは最古の記録となる.
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