研究概要 |
本補助金交付中は主としてエンスタタイト・コンドライトを研究し,以下の知見を得た.1)これらの隕石は他のどれより強度の衝撃を受けている.これはエンスタタイト・コンドライト母天体が存在していたと考えられる,太陽系の内惑星領域の天体衝突頻度が高かったことを示唆している.2)エンスタタイト・コンドライトの熱履歴は極めて多様で,溶融したものや,母天体表面で急冷したものや,内部で徐冷したちのなどが存在する.3)従来知られていなかった,全く新しいサブグループに属するエンスタタイト・コンドライトを何種類か発見した.これはこの種の隕石の形成環境が従来考えられてきたものよりはるかに多様なものであったことを反映している,と同時に分類体系の再検討を迫ることとなった.また,普通コンドライトについても母天体上での衝撃作用に着目して研究を行い,初めてJadeiteを隕石から発見し,衝撃時の高圧過程を検討した.さらにKoln大学Palme教授,Chicago大学Clayton教授と共に数種のエンスタタイト及び普通コンドライトとそれらに含まれる難揮発性包有物を研究し,これら包有物が従来考えられていたより,普遍的に多くの種類のコンドライトに分布することを初めて明らかにした.またこれらの包有物の酸素同位体組成を東京大学比屋根博士との共同研究により測定し,どの種類のコンドテイト中でも包有物は同様の酸素同位体組成を持つことを示した.これは包有物が原始太陽系の共通の場で生じたことを示すものであり,太陽系初期の物質進化の空間的位置付けに関する重要な知見となった.
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