研究概要 |
地球の下部マントルは、主にペロブスカイト型(Mg,Fe,Al)(Si,Al)O_3固溶体と岩塩型(Mg,Fe)O固溶体により構成されていると考えられている。地磁気測定から下部マントルは高い電気伝導性(10^0〜10^1S/m)をもつことが知られている。局所構造における振動特性の理解は複雑に絡み合った物性を理解するうえで重要である。EXAFS法は局所構造の振動特性の情報を与えてくれる。振動の非調和性は、イオン伝導のような物性と直接関係してる。本研究において、下部マントル構成鉱物の結晶の電気伝導度と導電機構を精密に調査した。下部マントル鉱物等の単結晶や均一組成試料を26GPa2000Kなどの極端条件下で合成を行った。複素インピーダンス法を用いて、高精度で導電率を測定した。マントル遷移層の主要構成鉱物のメージョライトガーネットやペロブスカイト型固溶体、岩塩型固溶体等について、回折法やEXAFS法による精密構造解析、各種分光法や分析法によるキャラクタリゼーションを高精度で行なった。EXAFS法による局所構造解析から高温高圧下での伝導イオンをポテンシャル障壁上に見い出す確率を見積もった。確率は、超イオン伝導状態の鉱物では融点近くの高温域で数パーセントに及ぶ。アナログ物質を含めたペロブスカイト型化合物は、融点近くの高温域でイオン伝導体であり、イオン移動の活性化エネルギーは約2.0eV(intrinsic:内因的)であることが明瞭になった。本研究により下部マントルでの高い電気伝導度はペロブスカイト型鉱物の内因的導電機構では説明できないことが明らかになった。下部マントルでの導電機構の可能性として、ペロブスカイト型固溶体の共晶反応を伴った外因的イオン伝導機構、あるいは、岩塩型固溶体のlarge-polaronによる導電が想定できる。
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