研究概要 |
本研究では,グラニュライトをよく近似する単純な化学系や天然のグラニュライトについて,1気圧から地殻下部やマントル上部に相当する圧力の範囲で相平衡実験を行った.これらの領域で重要な造岩鉱物の相関係を調べ,役に立つ地質温度計圧力計を確立する事を試みた.研究成果は以下の通りである. 1.カンラン石と単斜輝石の間のCa,FeおよびMgの分配に関する理論的研究やCa-Mgカンラン石の不混和現象の理論的実験的研究から,これらはともに結晶内交換反応を伴う非対称多席正則溶液の性質を持ち,これら2相間のFeとMgの分配係数が系のCa量およびFe/(Fe+Mg)の増加に伴って増大し,圧力が増加してもあまり増加しない事を明らかにした.また,Ca-Mgカンラン石が負の過剰体積を持つ事から,カンラン石のソルバスは圧力上昇とともに狭まる事を示した 2.Mg_3Al_2Si_3O_<12>(パイロープ組成)や(Mg_<0.75>,Fe_<0.25>)_3Al_2Si_3O_<12>(Prp_<75>組成)の相平衡実験からザクロ石の低圧相から直接的にザクロ石へと変化するのではなく,斜方輝石+サフィリン+石英や斜方輝石+サフィリン+珪線石などの低圧相とザクロ石とが共存する中間的なP-T領域が存在する事を明らかにした. 3.太古代東南極ナピア岩体エンダビーランド,マッキンタイヤー島に産する超高温グラニュライトの高温高圧下での相平衡実験から,このグラニュライトが11.2キロバールで895℃の変成作用を被り,さらに,10.9から11.4キロバールの間の圧力で873℃の後退変成作用を受けた事を明らかにした.
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