研究概要 |
周波数応答(FR)法によつて得られる複素速度係数,k+iωl,の内の虚数項1を、不均一系触媒反応が進行中の自由エネルギーの散逸速度と結び付けることが出来ることを、公表[J.Phys.Chem.B,1999]した。 この成果に基づいて、従来の速度式は専ら質量保存則に基づいているが、(化学反応式ではより本質的な)自由エネルギーの減少則を正面から取り上げて得られる反応式の重要性を、不均一系触媒反応に関する国際シンポジウム[Vama, Bulgaria,2000]で報告した。 これらはみんな「オレフィンの水素化反応」であったので、本研究課題の遂行のために,より素性のよい,反応系を探索してきたが、「一酸化炭素の酸化反応」に的を絞ることにした。金属触媒によるCOの酸化反応はもっとも単純な触媒反応のひとつであり、排気ガス対策などで実用的にも重要な反応であるため、多くの研究者によって様々な研究がなされている。 ルテニウム触媒を用いて、(1)周波数(FR)応答データを、反応圧力は約100Pa、反応温度は250-350℃で測定し、(2)パソコンを用いてFRデータのシミュレーションを行い、(3)5段階の素反応に関する、13個の速度係数を求め、(4)各段階での自由エネルギーの散逸速度を求めることが出来た。 この段階で結果をまとめて、2001年11月にJ.Phys.Chem.に投稿したが、2002年3月中旬の現在も、まだ受理通知を受け取っていない。 以上のような研究成果の中で、FR法の有効性の確信を深め、FR法を「反応速度スペクトロスコピー」と命名することを、上記の投稿論文の中で提唱している。
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