研究概要 |
まず、フェニルジアゾ酢酸エステルを基質として選び、10mo1%の希土類金属トリフラートを触媒として、アルコール類との反応を検討したところ、ジクロロメタン中、反応が円滑に進行し、目的とするα,α-置換生成物が良好な収率で得られた。また、l-メンチルエステル体を基質として、ジアステレオ選択性を調べたところ中程度であった。そこで、軸性キラリティーを有するキラルな配位子と希土類金属トリフラートを混合することにより調製した触媒を用い、反応の検討を行なったが選択性向上は見られなかった。 次に、σメトキシカルボニル-α-ジアゾアセトフェノンを酢酸ロジウムにより分解することによって生成するカルボニルイリドの立体制御について検討した。N-置換マレイミドとの反応において、酢酸ロジウムのみを触媒とし、ベンゼン中加熱還流の条件では、熱力学的安定なexo-体がするが、10mol%のYb(OTf)_3存在下、ジクロロメタン中反応を行なうと、endo-体が高い選択性で得られることを見出した。一方、芳香族アルデヒドやベンジルオキシアセトアルデヒドとの反応においては、10mol%のYb(OTf)_3の添加により、exo-体が極めた高い選択性で得られることを明らかにした。ベンジルオキシアセトアルデヒドとの反応において種々の軸性キラルルイス酸の添加を検討したところ、10mol%のイッテルビウム トリス(S)-1,1'-ビナフチ-2,2'-ジイル ホスフェートあるいは2,6-ビス[(4S)-(-)-イソプロピル-2-オキサゾリン-2-イル]ピリジンとSc(OTf)_3より調製した触媒の添加により、endo-体においてそれぞれ52%eeあるいは86%eeの不斉誘起が見られることを明らかにした。これは、カルボニルイリドの環状付加反応において、キラルルイス酸の添加により不斉誘起が観測された初めての例である。
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