研究概要 |
1.アリルシラン/アリルスズやアリルスズ/アリルスズなどのアリル14族複合金属試剤はベンジルやオルト-キノンなどの電子受容体分子との光電子移動反応において良好な電子供与体として働き,一電子酸化された複合試剤からスズカチオンが脱離することにより前者の複合試剤からはアリルシラン部位を有するアリルラジカルが発生し,後者からはアリルスズ部位を有するアリルラジカルが発生する。これらのラジカルと一電子還元されたセミジオンラジカルがカップリングすることにより,ルイス酸誘起反応では困難であったアリルシラン部位を有するα-ケトホモアリルアルコールやアリルスズ部位を有するα-ケトホモアリルアルコールが合成できることが明らかとなった。更にこのケトホモアリルアルコールを過塩素酸マグネシウムで処理するとシス-メチレンシクロペンタンジオールが得られ,フッ化テトラブチルアンモニウムで処理するとトランス-メチレンシクロペンタンジオールが得られるという立体選択的な5員環合成反応を見いだした。 2.アリルキノンは自然界において様々な機能を持つ有用物質である。1,2-ナフトキノンの4位にアリル基を導入する際,アリル化剤としてアリルスズ類を用いるとアリル基側の位置選択性が熱反応と光反応では対称的であることを見いだし,熱反応ではα-選択的導入が,光反応ではγ-選択的導入を実現できた。即ち,光反応では電子移動反応によって生じたアリルラジカルが反応に関与することからこの対照的な位置選択性が発現することがわかった。 3.また,従来アリル基を1,2-ナフトキノンの3位に導入することは困難とされてきたが,アリルシランとのラジカル反応を経由する光付加反応を利用すると直接導入が可能であることを明らかにした。
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