研究概要 |
1-(4-N, N-ジメチルアミノフェニル)-3-(4-ニトロフェニル)-1,3-ジフェニルアレン1(淡黄色油状物)と1-(4-カルボメトキシフェニル)-3-(4-N, N-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ジフェニルアレン2(無色固体)の二種のいわゆるpush-pull型置換アレン誘導体を、ベンゾフェノン誘導体を出発物質として数段階を経て得ることができた。1,2とも安定性が低く、室温で放置すると次第に分解して複雑な混合物を与えた。また、比較対照化合物として1-(4-N, N-ジメチルアミノフェニル)1,3,3-トリフェニルアレン3、1-(4-ニトロフェニル)-1,3,3-トリフェニルアレン4、1-(4-カルボメトキシフェニル)-1,3,3-トリフェニルアレン5、テトラフェニルアレン6などを合成した。 1,2の合成過程において、ジメチルアミノフェニル基を有するオレフィンの臭素化、脱臭化水素反応の再現性が得られないという、合成上の問題が生じたが、種々条件検討を重ねた結果、過塩素酸でジメチルアミノ基をプロトン化(保護)することにより再現性良く臭素化、脱臭化水素反応が進行することを突き止めた。両者とも収率は低く、また2は結晶性が悪く単結晶が得られない。 比較対照体3、6の分子構造(X線構造)や、関連化合物との^<13>CNMR、電子スペクトルの比較からpush-pull型置換アレン1,2は、push-pull型分極構造の寄与(カルベン型共鳴構造の寄与)が極めて小さいことが示唆された。1は黄色油状であり、2は固体ではあるものの単結晶が種々の検討にも関わらずいまだに得られていない。従って、本研究の目的の一つである結晶化学、例えば固相反応や、バルクでの光励起等への展開が出来なかった。
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