研究概要 |
研究の準備段階において、4-および5-位に嵩高い置換基を持つ1-アリールビシクロ[3.2.0]ヘプタンがCIEEL活性ジオキセタンとして熱安定性に優れた基本骨格となること、そしてこれらのジオキセタンが前駆体5-アリール-2,3-ジヒドロフランへの一重項酸素の、1,2-付加により効率良く合成できることを見い出している。本研究においてはこのような知見をベースにして、光学活性でかつCIEEL活性なジオキセタンの創出を企てた。まず、ジオキセタンの一重項酸素によるπ面選択的合成法を検討した。すなわち、5-アリール-2,3-ジヒドロフランの2-位にt-ブチル基のような嵩高い置換基を導入した場合、高い選択性(95:5)でr-2-R-t-4,t-5-epidoxy配置のジオキセタンが得られ、ジヒドロフラン環の3-位置換基の立体効果による一重項酸素の1,2-付加でも、そのπ面選択性は先の場合よりやや低いものの90:10で達成された。さらなる置換基の立体効果を期待した、2,3-ジヒドロフランの2,3-位に5員環を縮環させたものでは5員環のtrans-位より一重項酸素が付加した生成物のみが得られることが明かとなり、ジヒドロフラン環上の置換基がπ面選択的ジオキセタン合成に威力を発揮することが分かった。この手法を光学活性なketopinic acidより合成した3環性ジヒドロフランに適用することにより4環性の光学活性ジオキセタンが選択的に得られた。このようにして合成した新奇CIEEL活性ジオキセタンについて発光特性を調べたところ、立体異性体間では、生成するエミッターは同一であるにも拘わらず1重項化学励起効率にかなりの違いが認められた。これらの成果を基にして、光学活性フルオロフォアを持つジオキセタンの研究へと展開しつつある。
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