研究概要 |
本研究で明らかになったことを以下に列挙する。 (1)高配位ゲルマニウム化合物の固相および液相での構造 2-(2-t-butyl-5-oxo-1,3,2-oxathiagermolan-2-ylthio)acetic acidとその類似化合物の固相での構造および溶液の状態での動的な構造を研究した. 固相での構造 置換基がt-butylでもphenylでもX線結晶解析によって三方両錐であることが明らかになった。これらのピリジニウム塩もまた三方両錐の5配位構造であった. 溶液での構造 化合物1-4は2個の酸素原子をアピカル位に持つ,上下の三角錐が非対称な三方両錘構造であるが、室温NMRでは,上下の三角錐が等価である.すなわち^1H及び^<13>C NMRのどちらにおいても,ただ1種の-CH-単位が,^<13>C NMRにおいてもただ1種のカルボニル炭素が観測された.上下の三角錐が等価になる動的過程は偽回転であり、活性化自由エネルギーはいずれも約12kcal mol^<-1>と求められた. (2)トリアリールゲルマン類の高配位構造 これまでにさまざまな配位子をオルト位に持つトリアリールゲルマンの高配位構造を研究してきたが、本研究では、ゲルマニウム原子上の置換基の大きさや性質と高配位構造との関連を検討した。このために合成した化合物はchlorotris[2-(methoxymethyl)phenyl]germane及びmethyltris[2-(methoxymethyl)phenyl]germaneでX線結晶解析の結果、これらは5配位の三方両錐構造で、これまでの化合物のように、6、7配位というような高配位を示さなかった。その原因についてはさらに検討中である。 (3)ゲルマニウム原子を含む側鎖を持つアザクラウンエーテル、カリックスアレーン、パラシクロファンなどの合成と陽イオン輸送機能の研究などを平行して行った。ゲルマニウムを導入した効果は必ずしも明白ではなかったが、分子設計に関して有用な情報が得られた。 (4)高分解能Ge-73NMR法を高配位構造の解明に利用するための予備的研究を進めた.
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