研究概要 |
クサギ果実色素トリコトミン(1)の前駆体,2,3,5,6,11,11b-ヘキサヒドロ-1H-インドリジノ[8,7-b]インドール-5,11b-ジカルボン酸(2)のジメチルエステル(5)は,トリプトファンメチル(7)と2-オキソグルタル酸ジメチル(8)とから,その立体過程が11b-位の立体配置を決めるPictet-Spengler反応を経由して生成し,両方の11b-位立体異性体が生成する。この反応において11b-位立体異性体の生成の固体酸触媒よる制御の可能性,また,このエステルのゼオライト空洞内での光化学反応による反応の立体化学の制御の可能性を検討するための予備的な研究として本研究を行った。エステル(7)とエステル(8)とのPictet-Spengler反応:均一系の触媒としては,メタノール中の塩酸塩の塩酸,ベンゼン中のp-トルエンスルホン酸,溶媒可溶なルイス酸としてアルミニウムイソプロポキシドを用いた。固体酸触媒としてはアルミナ,ゼオライト(MCM-41,A-4,F-9,モレキュラーシーブス10Å),モルデナイト(H型),アエロジル200(シリカゲル)を用い,溶媒がベンゼンの場合にはDean-Starkトラップを用いて生成する水を共沸除去した。触媒を除去した後,反応溶液を減圧濃縮し,濃縮物について高速液体クロマト,薄層クロマト,カラムクロマトによる分離・精製およびNMRスペクトルより生成物の検討を行った。均一系の反応では主として11bβ-体(5b)が生成するが,ゼオライトを用いた均一系の反応では,11bα-体(5a)が主生成物で,溶液中の反応と固体表面での反応とで11b-位の立体化学が大きく異なることが判明した。またゼオライト(MCM-41)では11bβ-体ヘラクタム化する直前段階のテトラヒドロ-β-カルボリン誘導体(6b)が多く生成することが認められ,細孔内での11bβ-体へのラクタム化が困難であることを示した。
|