研究概要 |
V_2O_5、VOPO_4あるいはZr(HPO_4)_2の層間にいくつかの金属錯体を挿入し、その錯体分子の配向ならびにホスト格子との相互作用を検討した。ピリジン環を含む窒素三座配位子を有するPd(II)錯体[{C_5H_4NCH_2NH(CH_2)_2NMe_2}PdI]^+(A)、ピリジン環とともにフェニル基を有して窒素および炭素原子で金属と結合し、さらにジエチルジチオカーバメートを有するAu(III)錯体[(C_5H_4NNHC_6H_4)Au(S_2CNEt_2)]^+(B)および窒素四座配位子であるcyclamを有する錯体[{-NH(CH_2)_2NH(CH_2)_3-}_2M]^<2+>(M=Cu(II)、Ni(II)(CおよびD)を用いて、V_2O_5(H_2O)_<0.5>[A]_<0.18>、V_2O_5(H_2O)_<1.3>[B]_<0.04>、V_2O_5(H_2O)_<0.5>-[C]_<0.15>、V_2O_5(H_2O)_<0.5>[D]_<0.14>の層間化合物を得た。粉末X線回折から決定した層間距離は12.3〜14.3Aであり、錯体イオンはホスト層にほぼ平行に配向している。一方、Zr(HPO_4)_2(H_2O)_<0.5>[C]_<0.4>が得られ、その層間距離は16.7Aであり、ゲスト分子はホスト格子層に対して傾斜して配列している。V_2O_5層間化合物では、V(IV)イオンによる強いブロードなESRシグナルがg=1.97に見られるが、V_2O_5-[C]層間化合物ではg=2.03にシグナルが観測され、格子-ゲスト間電子的相互作用を示す。Zr(HPO_4)_2-[C]層間化合物では、錯体C自体と同様にg=2.06にシグナルが現れ、対照的である。 鉄錯体のスピン-クロスオーバー挙動には分子の変形がともなわれ、その鉄錯体は分子環境に敏感なプローブとなりうる。粘土ホスト化合物NaTMS(sodium fluorotetrasilicicmica)の層間に鉄錯体を挿入し、ゲスト分子への構造制限効果を磁化率と^<57>Feメスバウアー分光学により調べた。[Fe^<II>(amp)_3]^<2+>(amp=2-aminomethylpyridine),[Fe^<III>-(acpa)_2]^+(Hacpa=N-(1-acetyl-2-propylidene)-2-pyridylmethylamine)および[Fe^<III>(sal_2trien)]^+(H_2sal_2trien=N,N′-disalicylidenetriethylenetetramine)について検討し、層間空間で高スピン-低スピンエネルギーギャップに顕著な減少が見られた。
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