研究概要 |
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子は次世代のフラットディスプレーとして注目されているが、これを構成する電子輸送材料は選択の余地がないほどに少ない。このため我々は全フッ素置換された2つのフッ化フェニレンデンドリマーC60F42(分子量:1518)およびC132F90(分子量:3295)を設計し、臭素化反応とクロスカップリングの繰返しにより合成した。構造と性質の関係を知るために、p-terphenylとp-quaterpheylを含む二つのC60F42異性体の合成も同時に行った。これらの化合物は無色の固体で、トルエンやクロロフォルム等に溶解する。3つのC60F42はガラス転移を125-135度で示した。ITO基板上にTPTEをホール輸送層、Alq3を発光層、フッ化フェニレンを電子輸送層、LiFを電子注入層、アルミニウムを陰極として真空蒸着し、有機EL素子を作成した。最高輝度は、24.4Vで2860cd/m2であった。還元電位の測定によると、フッ化フェニレンの電子親和度が増加するほど素子としての性能が向上することがわかった。これに従い、直線状のオリゴマーであるperfluoro-p-quinquephenylからoctiphenyl(PF-5P,6P,7P,8P)の合成を行った。これらを電子輸送層として使用した素子は、デンドリマーのものに比べはるかに優れた性能を示した。PF-6Pの誘導体では、最高輝度が10Vで19970cd/m^2に達した。PF-7PおよびPF-8Pの輝度-電圧、電流-電圧曲線はPF-6Pのそれとほとんど同じであった。これは電子注入よりも電子移動が律速になっているためであると考えている。PF-6Pから-8Pの性能は現在最もよく使用されているAlq3にほぼ匹敵し、今後これらの実用化の可能性を探りたい。
|