研究概要 |
1:5-10nm 長の多機能ヘテロ環パイ共役オリゴマーの新規構築 単一分子電線は分子スケールエレクトロニクス素子の根幹要素の一つである。現在の電子線リソグラフィー技術の限界を鑑みると、単一分子電線のトンネル電子輸送能の直接計測のためには"鎖長10nm級" の低エネルギーギャップ型鎖状パイ共役分子が必要とされている。このサイズの分子の合成に際しては、低溶解性や分離精製/構造決定の困難さが大きな障害となり、一般的合成法は未だ確立されていない。本研究では、分子量数千程度の可溶性・分子モジュールを多種類開発し、それらモジュールを順次結合することにより、鎖長10nm 級の"非周期的・定序配列・定鎖長の巨大パイ共役分子"を構築する方法の開発を行なった。まず鎖長1.5〜4.5nm(分子量1,000-3,000)の高溶解性オリゴマーを各種開発し、それらのクロスカップリング反応を行うことにより、各種の化学修飾サイトを組み込んだチオフェン 14〜28 量体(l : 5〜10nm、分子量3,500-7,000)の選択的合成まで成功した。今後、導入した化学修飾サイトを低エネルギーギャップユニットに変換することにより高効率電子輸送が可能な分子電線が得られるものと考えている。 2:大型分子の自己組織化用の分子構築モジュールの設計・合成 近年の単一分子デバイスの開発状況を鑑みると、機能分子の精密な集積化が研究目標と成りつつある。そこで本研究においても、10nm 級の多機能型大型分子の集積化法の検討を行なうことにした。大型分子の共役主鎖に選択的な分子鎖間接続/相互作用部位を付与するため、各種の側鎖置換基を共役主鎖に直交する形で導入する方法を開発した。得られた分子モジュールの基板表面での自己組織化について、現在超高真空・低温 STM 法で検討を進めている。
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