宮城県鳴子町の強酸性湖潟沼において、1998年より2000年に水質、細菌現存量の調査を短い間隔で行い、更に細菌の分子系統分類的な解析を試みた。 1.潟沼は基本的には二循環湖であるが、春から夏の停滞期の間に急激な気温低下があると、一時的に全層の水が循環する現象が1998年及び1999年に数回ずつ確認され、その時硫化水素を含む無酸素状態が全層に広がった。一方、2000年は気温の低下がなかったため、成層が保たれ、停滞期の深水層は無酸素状態となり硫化水素が蓄積され、秋の循環期に入ってから、低酸素状態は全層に広り数週間続いた。その年の天候によって、一時的な循環の有無や水質変化が異なった。 2.糸状細菌の現存量は停滞期に表面と温度躍層付近の2層に高密度だったが、一時的な循環によって分散し均一になった。秋の循環期になると全層で低密度になった。一方、桿菌は成層期には現存量が少なく、循環期に入り密度が増加した。このように、細菌群集の現存量は湖水の成層・循環状態に大きく影響を受けた。 3.各種培地を用いて湖水より菌株の単離を試みたが、停滞期の表水層から従属栄養細菌のみが単離でき、これらの菌株の16SrRNA遺伝子の塩基配列を決定した結果、プロテオバクテリアαグループに属するMethylobacterium fujisawaenseに高い相同性持つ株と、γグループのLysobacter enzymogenesに高い相同性を持つ株であることが明らかになった。後者はデータベース上の鉄酸化無機栄養細菌とも高い相同性を持っていて、独立栄養に寄与している可能性が示唆された。 4.湖水から直接にクローングによって、塩基配列を決定する予定であったが、まだ決定できておらず、優占種と考えられる糸状細菌の系統分類による解析が将来の課題として残った。
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